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育鵬社の中学校教科書、県内170校で使用へ/神奈川

神奈川新聞 2011年9月23日

 2012年春から順次使われる中学校の歴史・公民教科書の採択が終了し、愛国心の育成を主眼に置いた育鵬社の教科書が、県内では170校で使用されることが、22日までに決まった。新たに私立横浜中学校(横浜市金沢区)が同社の歴史・公民教科書を採択していたことも判明した。

 育鵬社によると、県内で同社教科書を採用するのは、横浜市立中学校全148校(歴史・公民)、同市立南高校付属中学校(同)、藤沢市立中学校全19校(同)、県立平塚中等教育学校(歴史)、私立横浜中学校(歴史・公民)。全国で採択された教科書のうち、同社の教科書が占める割合は歴史・公民とも4%前後になるという。

 同社の教科書に対しては、「自国に誇りを抱ける」「戦争を美化している」などと賛否の声があり、歴史認識をめぐって論争が起きている。

育鵬社教科書を採用した県内の中学校など

 横浜市立中学校全148校(歴史・公民)
 横浜市立南高校付属中学校(歴史・公民)
 藤沢市立中学校全19校(歴史・公民)
 県立平塚中等教育学校(歴史)
 私立横浜中学校(歴史・公民)


<「つくる会」>主導の中学歴史教科書 公立校で採用ゼロ

毎日新聞 2011年9月6日

 「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが5日、文部科学省で記者会見し、来年度から使われる中学校の歴史教科書について同会が主導した自由社版の採択が公立校でゼロだったと発表した。同会によると、私立は6校あり、推定採択率は0.05%と、前回09年度の1.1%から低下。公民は都立特別支援学校中学部20校、私立1校で採択され、推定採択率は0.02%だった。不振の責任を取り藤岡信勝会長(67)は辞任し、杉原誠四郎・帝京平成大教授(70)が新会長に就任した。


「つくる会」会長に杉原氏

産経新聞 2011年9月6日

 「新しい歴史教科書をつくる会」は5日、8月31日付で藤岡信勝会長が会長職を辞任し、新たに杉原誠四郎副会長を会長に選出したことを明らかにした。

 同会のメンバーらが執筆した自由社の歴史・公民教科書の採択が少なかったことなどから、藤岡氏が辞任を申し出たという。


藤岡会長が辞任 つくる会、流用問題

神奈川新聞 2011年9月6日

 「新しい歴史教科書をつくる会」は5日、同会が主導して編集した自由社(東京)の中学歴史教科書で、年表を東京書籍の教科書から流用した問題を受け、藤岡信勝会長が8月31日付で辞任し、杉原誠四郎新会長が就任したと発表した。

 つくる会によると、来年度、自由社の歴史教科書を採択予定としたのは4都県の市立中6校にとどまり、中学公民教科書も東京都立の特別支援学校20校と私立中1校だけとみられる。


教科書採択率:育鵬社の歴史教科書は前回の6倍

毎日新聞 2011年9月2日

 扶桑社版の教科書発行を引き継いだ育鵬社(東京都港区)の教科書執筆者らが1日、文部科学省で記者会見し、来年度から使われる中学校の歴史教科書の公私立を合わせた採択率が前回09年度の約6倍にあたる約3.8%との推計値を発表した。公民教科書も約12倍の約4.2%との見通しを示した。

 同社版の普及を支援する「教科書改善の会」メンバーらによると、判明した1学年当たりの使用予定数は歴史約4万5000冊、公民約5万冊。神奈川県では横浜市や藤沢市が採択し、県全体のシェアが4割以上と推計。同会事務局担当の八木秀次・高崎経済大教授は「改正教育基本法と新学習指導要領の趣旨を一番反映した教科書との理解が広がった」と話した。【木村健二】


「脱原発も緊急の課題」【8月の投稿から】

神奈川新聞 2011年08月31日

 29日で死者1万5745人、行方不明者4467人(警察庁まとめ)となった東日本大震災、さらに鎮魂の8月≠受け、「核」「支え合い」をテーマに募集。「核」6編、「支え合い」3編を集中掲載した。

 核では、横須賀市の主婦(66)が「核廃絶はもちろん、脱原発も緊急の課題」と訴え、「平和利用、安全神話という言葉に一抹の不安を感じないではなかったが、日本の科学技術に頼むところがあった。何より自身の生活に手いっぱいで原発を黙認してきた」。支え合いでは、川崎市の主婦(86)が体験を寄せ、東京大空襲などで3回焼け出されながら「兄弟姉妹が助け合うことで、戦中戦後を生き抜いた」。

 横浜市教委が育鵬社の中学歴史教科書を採択。賛否両論あったが、「育鵬社は一方の見地からのみ書かれ、教育における多様な考え方や選択の機会を生徒や教員から奪っている」として、採択の再考を求めた高校教員(55)の意見が最も印象に残った。(市民情報部・土屋 正敏)

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横浜市教科書

神奈川新聞社説 2011年08月07日

採択理由丁寧に説明を

 「力業」。採択の経緯を見ているとこの言葉が頭に浮かんでくる。

 愛国心の育成を主眼に置く育鵬社の歴史と公民の教科書が、藤沢市教育委員会、県教育委員会に続き、横浜市教育委員会でも採択された。

 その歴史認識をめぐって論争が起き、賛否の声が数多く寄せられる中での採択である。

 横浜市では、同様に愛国心を前面に打ち出した自由社の教科書が市内8区で2009年に採択されている。

 当時、校長や有識者、保護者らで構成された審議会は、自由社の教科書の評価について、全区で最も低いとする答申を提出した。採択は答申を覆す結果になった。

 今回も、現場の意見である審議会の答申では、育鵬社の教科書の評価は相対的に低かった。

 歴史分野の7社の教科書を16項目で評価したうち、最も高い評価の東京書籍は12項目で適切とされた。一方、育鵬社は8項目にとどまり、5番目の評価だった。

 垣間見えるのは、09年と同じ構図である。教育委員会は低い評価がなされた教科書を選び、採択は答申と相いれないものになった。

 現場の意見に真摯(しんし)に耳を傾けるべきではなかったか。何のための、誰のための教科書なのか。教育委員会にそうした視点が不十分で、最初から採択結果が決まっていたかのような印象すら受ける。

 教科書は教師や子どもたちが毎日、学校で用いる。一番身近な立場で教科書を手にする教師の声はもっと尊重されていい。それがなおざりになった影響は大きい。教え方にも事象に多面的に迫るなどの工夫が求められよう。

 「過去の出来事を現在の視点だけで批判するのは一方的」「今の若者は自国への誇りを抱けずにいる」。採択で育鵬社の教科書に投票した委員らの発言だ。従来の歴史教育を自虐史観に基づくやり方と批判する立場からの主張だろう。

 歴史教育のあり方について、さまざまな見方や意見が存在することはむしろ健全なことだ。教育委員は答申内容にとらわれず意見を述べ合っていい。

 しかし、少数意見が教育現場での多数の声を制し、教科書が選ばれるとしたら危うくはないか。だからこそ、教育委員会は今回の採択理由について丁寧に説明する必要がある。


【教科書を考える】4委員育鵬社版選ぶ いずれも前市長が任命

朝日新聞地方版 2011年08月05日

 全国最大の採択地区となる横浜市で、来春から市立中学で使う歴史と公民の教科書が「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版に決まった。「自国中心の歴史」などの批判があり、全国的に同社版の採択は少ないが、6人中4人の教育委員が賛成した。

 定例会は午前10時に始まった。無記名だった2年前から一転して記名投票とし、歴史、公民を各7社から選んだ。投票では今田忠彦、小浜逸郎、野木秀子、中里順子の各委員が育鵬社、山田巧委員が東京書籍、奥山千鶴子委員が歴史に日本文教出版、公民に教育出版を選んだ。育鵬社とした4人は中田宏前市長が任命した委員だった。

 専門家でつくる市教科書選定審議会の答申は、16項目ある観点別評価で同社を上回る教科書が歴史・公民でそれぞれ複数あった。

 記者会見した今田委員長は「先の戦争を侵略と決めてかかるのは乱暴すぎる。複合的に見ないといけない。東南アジアも欧米支配から独立した国がたくさんある。そういう歴史をきっちり教えていくのが大事」と強調。育鵬社版を「歴史に対する温かみがいっぱいある」と評価した。

 「つくる会」系の教科書に対する反対運動には「自分たちのイデオロギー闘争をしているだけじゃないのか。義憤を感じた」とも。

 一方、東京書籍を選んだ山田巧教育長は「歴史的事象は見方によって百八十度違う。自分は答申の観点別評価が相対的に高い教科書を選んだ」と説明した。

 この日の定例会を傍聴できた市民は20人。抽選に外れた約500人は別会場で音声を聞けたが、100人以上がこの会場にも入れなかった。育鵬社に決まると、会場のあちこちから大きなため息が漏れた。

 中2の息子と一緒にいた港北区の主婦(43)は、委員の一人が「日本の負の歴史を教えると『日本人としての誇り』が失われる」と主張しているように聞こえた。「目を閉ざすことで日本を誇りに思う心を育てられるとは思えない」

 中区の元高校教諭の女性は「この教科書は歴史のとらえ方が非常に特殊。高校と全く別のことを学ぶことになる」。緑区の50代女性は「育鵬社の公民教科書は原発推進の論調。事故が起きた後にこの教科書を選ぶ神経がわからない」と言い、市立中学の教諭は「今後4年間、あの教科書を教えなければならないと思うと苦痛。6人の委員で横浜全体の教科書を決めることに疑問を感じる。学校採択にするべきだ」と訴えた。(佐藤善一、星井麻紀、古沢範英)

◇歴史・公民分野の審議での各委員の主な発言

■今田忠彦委員長(元市総務局長)

「過去の歴史を現代の視点から批判するのは一方的。若者が祖国に誇りを持てない。日本の伝統文化には奥ゆかしさ、すばらしさがたくさんある。国旗国歌はなぜ大切かを理解するのが大事。領土問題も全体に扱いが小さい」

■小浜逸郎委員(著述業)

「伝統文化の尊重という観点は、宗教や神話をどう扱うかに現れる。大日本帝国憲法は当時は諸外国から称賛された。日本人も外国人も等しく人権があるという記述に引っかかる。外国人参政権を無原則に認めれば国家主権を危うくする」

■野木秀子委員(IT企業役員)

「答申の観点のうち教育基本法改正を反映した部分を重く考えたい。グローバルな時代こそ、日本人として誇りを持ち軸がぶれないことが大切になる。もの作りの原点や、女性の問題がきちんと取り上げられていることも重要だ」

■中里順子委員(元中学校長)

「歴史を学べば学ぶほど日本が好きになる教育であってほしい。自衛隊、外国人参政権の書き方や内容、国旗国歌や竹島・尖閣諸島の記述も教科書によって随分違う。子どもたちが健全な国家観を持てるような学習をしてほしい」

■奥山千鶴子委員(子育て支援NPO理事長)

「教科書は歴史書ではない。解釈がはっきりしないものが多いと学習の妨げになる。歴史認識が極端でないことが大切。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という日本国憲法の基本がきちんと書かれていることを重視したい」

■山田巧委員(市教育長)

「横浜の子どもの学習実態を見れば、歴史観というよりも基本的な知識や概念の習得が大切だ。頭の中を整理しやすいことや、わかりやすさを求めるべきだ。歴史書が好きな人はたくさんいるが、それと教科書は分けて考えた方がよい」

歴史・公民教科書に育鵬社版を採択した横浜市の教育委員=横浜市役所
歴史・公民教科書に育鵬社版を採択した横浜市の教育委員=横浜市役所


【神奈川】中田前市長時代 任命の委員 4人とも賛成 横浜・育鵬社版採択

東京新聞 2011年8月5日

 横浜市立中学校で二〇一二年度から使用する歴史と公民の教科書は四日、「戦争を美化している」などの批判が出ていた育鵬社版に決まった。市の教育委員六人のうち、中田宏前市長の時代に任命された四人全員が、同社版に投票した。同社版を推した委員からは、従来の教科書で学んだ若者の意識を批判するような発言も出た。(荒井六貴)

■ 「置き土産」説

 育鵬社版に賛成したのは、元市総務局長の今田忠彦委員長(67)と、国士舘大客員教授の小浜逸郎(64)、会社顧問の野木秀子(62)、元市立中学校長の中里順子(63)の三委員。いずれも中田前市長時代に任命された。

 中田前市長は、歴史認識をめぐり、育鵬社版と同様の批判がある自由社版の教科書を作った「新しい歴史教科書をつくる会」を支援していた時期もあった。そのため、二〇〇九年八月に市内八区で自由社版が採択された際は、直前に辞任した中田前市長の「置き土産」との見方もあった。

 ただ、林文子市長に任命され、採択では別の教科書を推した教育長の山田巧委員(60)は会見で「市長がだれかは関係ない」と、こうした見方を否定。今田委員長も、山田氏の考えに同意した。

■ 若者論

 「二十代の若者と話す機会があるが、日本に対して誇りを持っていない。教育の大切さを痛感した」(中里委員)、「今の学生は公民的な感覚が低い。自由権を『遊ぶ自由』と言った学生もいた。自分の身の回りしか関心がない」(小浜委員)。

 この日の市教委では、歴史と公民の教科書をめぐる議論とともに、一部委員が現代の若者批判を展開。育鵬社版を使った教育で、若者の意識が変化することへの期待を示した。

 一方で、同社版を推さなかったNPO理事長の奥山千鶴子委員(48)は「若者が覇気がないなどと言われるのは、経済的なことも影響があると思う。歴史だけではなく、若者をきちんと育てる全体的な取り組みが必要」と反論した。

 山田委員も「歴史教科書で、若者の人生観が規定されるとは思わない」と、同調した。

 こうした議論を傍聴していた横浜国立大四年の兵庫貴宏さん(23)は「中学の教科書に何が書いてあったかは覚えてないし、そんなに影響があるとは思えない。若者からみて、大人もどうしようもないと、思うこともある」と、委員らの若者論に疑問を投げかけていた。

教科書採択後、会見する今田委員長(左)と山田教育長=横浜市役所で
教科書採択後、会見する今田委員長(左)と山田教育長=横浜市役所で


横浜市教委も育鵬社の教科書採択、県内3例目 愛国心主眼/神奈川

神奈川新聞 2011年8月5日

 横浜市教育委員会の定例会が4日開かれ、愛国心の育成を主眼に置く育鵬社の歴史と公民の教科書を採択した。2012年度以降順次、市立中学校と中等教育学校計149校の約8万人が使う。同社の教科書を採択したのは、県内では藤沢市教委、県教委に次いで3例目。

 審議は公開で行われ、「日本に誇りや愛情を持てるような教科書を採択すべきだ」という意見が相次いだ。委員6人の記名投票で、歴史、公民ともに4人が育鵬社を選び、2人が別の教科書に票を入れた。

 委員会では、校長や有識者、保護者らでつくる教科書取扱審議会の答申結果を公表。歴史分野では7社の教科書を16項目で評価し、最も高い評価を受けた東京書籍が12項目、日本文教出版が10項目、教育出版と帝国書院が9項目で適切、育鵬社は8項目で適切であるとされていた。

 横浜市教委は2009年8月、全国の公立学校で初めて「新しい歴史教科書をつくる会」が主導する自由社の歴史教科書を18区中8区で採択。同年10月には18区に分かれていた採択地区を1区に統合することが決まり、全国最大の採択地区となっていた。


学ぶ意欲かき立てる 横浜市教科書採択

神奈川新聞 2011年8月5日 社会面

■4委員 育鵬社版を評価

 「過去の出来事を現在の視点だけで批判するのは一方的すぎる」(今田忠彦教育委員長)、「今の若者は自国への誇りを抱けずにいる」(中里順子委員)―。歴史と公民の中学校教科書に育鵬社版を採択した横浜市教育委員会。今田委員長をはじめとする育鵬社に投票した4委員は、新学習指導要領の文言を引用しながら持論を展開した。

 一方で山田巧教育長は歴史について「多角的に考察する学習をし、(考え方の)選択肢を与えることがもっとも大切だ」と主張。公民でも、4委員が国旗国歌や領土問題、東アジア情勢など政治的事例の扱いにこだわる中で「中学生にとって分かりやすいテーマ設定や工夫があることが大事」と意見を述べた。

 委員会終了後の会見で今田委員長は「日本に対する温かい捉え方があり、学ぶ意欲をかき立てる」と育鵬社版教科書を評価。山田教育長は「検定を通り教育委員が選んだ結果」と言うにとどめた。

 また今田委員長は市民団体などから辞任要求を受けたことを挙げ、「権限に基づき職務を履行しようとするとき、なぜ誹謗(ひぼう)中傷を受けねばならないのか」と批判した。

   ◇

 「戦争は、戦争だけは絶対にいかんです」。傍聴席で議論を見守った黒澤利時さん(75)=都筑区=は、こみ上げるものを必死にかみしめた。幼いころ経験した太平洋戦争。「政治的に右とか左とかではない。あんな思いを二度としたくないだけ。戦争を知らない委員には分からないのか」

 同じく傍聴席にいた横浜国大4年の兵庫貴宏さん(23)=鶴見区=は「教科書を通して子どもの人格形成をすべて掌握できると思っている」大人たちに対して違和感を覚えたという。

 また横浜教科書採択連絡会は「委員らの政治信条を優先させた政治介入だ」と委員らを批判した。

■“くら替え”で姿勢鮮明

◆解説

 横浜市教育委員会が育鵬社の歴史と公民教科書を採択した。2009年市内8区で採択した自由社版からわずか2年での“くら替え”。あらためて同市教委が、愛国心や文化・伝統を重視する教育姿勢を鮮明にした。12年度から順次、約8万人の中学生が使う影響は大きい。

 新教育基本法や新学習指導要領のもとで各社の教科書が出そろった今年の採択は、政治的な性格を強く帯び、アジア諸国からも注目された。

 議決は4対2。中田宏前市長時代以来続投する今田教育委員長らが育鵬社を推し、林文子現市長が選んだ山田巧教育長らは他社を推した。事前の市教科書取扱審議会の答申では、歴史分野で育鵬社は7社中5番目の評価だった。

 地域の教育に責任を持つ教育委員は、答申に拘束されず審議する立場であるからこそ、採択理由を十分に説明する義務がある。

 また東京書籍版の年表盗用を認めた自由社が市販本の回収を始める一方で、中学では盗用教科書を使い続ける理由を、中学生と納税者である市民に分かりやすく説明する義務もある。

 学校現場では、単に教科書を教えるのではなく、当時の新聞を用いるなど生徒自身が多角的に調べ、学べるような実践が求められている。


横浜市もつくる会系・育鵬社の教科書採択 来春から使用

朝日新聞 2011年8月4日

 横浜市教育委員会(今田忠彦委員長、6人)は4日の定例会で、来春から市内の市立中学校で使う歴史と公民の教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版を採択した。全国最大の採択地区で、149校(在校生徒数約8万人)が対象となる。

 6人の委員の記名投票の結果、いずれも賛成多数で決まった。市立中高一貫校でも使用が決まった。

 委員のうち、今田委員長を含む4人は中田宏前市長が任命した。市教委は中田市長時代の2009年夏の採択で、市内18区のうち8区の市立中学校で使う歴史教科書に「つくる会」系の自由社版を採択している。


全市立中で「つくる会」系教科書=歴史・公民、来年度から―横浜市教委

朝日新聞(時事通信) 2011年8月4日20時6分

 横浜市教育委員会は4日、2012〜15年度に全18区の市立中学校149校で使う歴史と公民の教科書について、「自国中心の歴史観を植え付ける」などとして国内外から反発のあった「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社の教科書を採択した。

 市教委は前回も8区で「つくる会」系の自由社の教科書を採択。今回は全区一括方式に変更され、対象生徒が約8万人と全国最多になったため注目されていた。

 採択は今田忠彦教育委員長ら6人の記名投票で行われ、歴史、公民とも4人が育鵬社を選んだ。今田委員長は「『国への愛情を深める』という学習指導要領が求める項目について工夫されていた。コラムなどで立派な先人の存在を具体的に描き、歴史の臨場感を伝え、学ぶ喜びを感じさせるものだった」と評価した。


歴史・公民教科書 横浜市 つくる会系採択

東京新聞 2011年8月5日朝刊

 横浜市教育委員会は四日、定例会を開き、すべての市立中学校で来春から四年間使う歴史と公民の教科書として、「新しい歴史教科書をつくる会」元メンバーらが執筆した育鵬社(東京)の教科書を採択した。

 横浜市によると、使用生徒数は全国最多で、歴史、公民とも四年間で十万人以上の中学生に配布される。同社の教科書には、市民団体が「戦前日本の植民地支配を美化する内容だ」として、採択に反対する約十一万人分の署名を市教委に提出していた。

 市教委の委員六人は、中学校の十五科目の教科書を記名投票で採択。歴史教科書は四人が育鵬社版を推し、多数決で決定した。中学三年生の公民の教科書も、四人が育鵬社版に投票し採択した。

 同市の中学歴史教科書は、二〇〇九年度の前回採択時に、市内八区で「つくる会」主導の自由社版を全国で初めて採択。その直後、区ごとに教科書を採択していた方法を、手続きの煩雑さや、市内での転出入で教科書が変わることを理由に変更。今回は全十八区一括で採択した。

 育鵬社版に投票した市教委の今田忠彦委員長は「内容に歴史の臨場感があり、温かみがある。東京裁判なども多面的にバランス良く書かれている」と説明した。

 一方、市民団体「横浜教科書採択連絡会」事務局の佐藤満喜子さんは「子どもにとって、適切な内容なのかという議論より、賛成した委員の政治的信条を優先させている」と話した。


【話題のニュース】横浜市が育鵬社の歴史教科書採択 全国最多の中学147校

東京新聞(共同通信) 2011年8月4日 15時41分

中学校の教科書を採択する定例会に臨む横浜市教育委員=4日午前、横浜市役所

 横浜市教育委員会は4日、定例会を開き、来春から4年間、市内147校の市立中学などで使用する歴史と公民の教科書として、育鵬社(東京)の教科書を採択した。

 育鵬社は、かつて「新しい歴史教科書をつくる会」と協力した扶桑社(東京)の教科書を継承する子会社で、国を愛する心の育成などを重視する編集方針を掲げる。横浜市によると、市立中の全生徒数は1学年約2万7千人と、同一教科書を使う人数では全国最多。

 育鵬社版に反対する市民団体は「戦争を正当化する教科書を多くの学校現場に押しつけるのは許せない」と反発している。

中学校の教科書を採択する定例会に臨む横浜市教育委員=4日午前、横浜市役所
中学校の教科書を採択する定例会に臨む横浜市教育委員=4日午前、横浜市役所


【教科書を考える】市教委きょう採択 「つくる会」系版に注目

朝日新聞地方版 2011年08月04日

 2012年度から横浜市立中学校で使用される教科書が、4日に開かれる同市教育委員会定例会で採択される。歴史・公民分野で「新しい歴史教科書をつくる会」系の自由社・育鵬社版が選ばれるかどうかに注目が集まっている。

 定例会は午前10時から横浜市中区の市教委会議室で。採決方法は当日決まるが、09年に市内8区で「つくる会」系の自由社版を採択した際は委員6人の無記名投票だった。10年度から採択地区を一本化したため、対象生徒は全国最多の約8万人となる。

 会場の一般傍聴席は20席。市民に議論を公開するため広い場所での開催を求める要望が出ていたが、実現しなかった。市教委は「静謐(せい・ひつ)な環境を維持するため」としている。希望者は市教育文化センターで音声のみ聞くことができる。

 かながわ市民オンブズマンの調査では、県内34教委のうち09年4月〜10年1月に無記名投票をしたのは横浜市を含め5教委。同オンブズは「委員には開かれた場で意見を明らかにする責任がある」としている。

 今回の採択には、実際に教科書を使う生徒も無関心ではいられない。昨年から自由社版の歴史教科書で学ぶ横浜市内の市立中学校に通う2年の女子生徒は、「ビミョーな教科書」と思って使ってきた。

 最初に感じたのは先生が「写真が間違っているので上から貼りなさい」と別の写真を配った時。「教科書が間違ってるなんて、生まれて初めてだった」

 第2次世界大戦の部分を開いてみた。小学生の時に祖父母から戦争体験を聞き、戦争の被害と加害の側面や、広島、長崎の原爆について学んだ。だが教科書は、日本の東南アジア占領が「独立への夢と希望」になったとする。「なんか違う」という感覚が、心の底に残った。

 別の中学2年の女子は、小6の時に街で受け取ったビラで、自分たちが中学で使う歴史教科書が問題になっていることを知った。でも、クラスでそのことが話題になったことはない。

 「給食やクーラー設置の要望書ならすぐに署名が集まるのに」。ある中学生の保護者はため息をつく。子どもが使う教科書に何が書いてあるか、多くの人が知らなかったという。

 「署名すれば内申書に響く、と心配する親もいた」と別の保護者は学校に気軽に「口出し」できない雰囲気があると指摘。「こうして静かに何かが変わっていくのが怖い」と話した。(星井麻紀)


継続使用に疑問の声、年表盗用の自由社中学校歴史教科書/横浜

神奈川新聞 2011年8月4日

 東京書籍の教科書から年表を盗用していた自由社版の中学校歴史教科書を使っている横浜市内8区の73中学校では3日、今後もこの教科書を使い続けることが分かった。市販本は回収を始めた自由社が、教科書では新版(2012年度版)の年表差し替えにとどめ、現行版(10、11年度版)については措置しないため。社会科教諭たちからは「子どもに教えるのにふさわしいのか」と疑問の声が上がっている。

■ほぼ引き写し

 自由社は年表について「以前からほぼ引き写しであり、東京書籍の著作権を侵害した」と認め、東京書籍と協議し(1)市販本の回収(約1万冊)(2)各自治体の教育委員会に送った新版見本本の年表差し替え(3)横浜市立中学校など現行版を使用している中学校長へのわび状送付―の措置を取るとした。各教委で現在行われている採択の対象である新版についても、文部科学省に訂正申請し差し替えるという。

 一方、中学生が使っている現行版について、自由社は「年表自体は間違っておらず、差し替えなどは逆に混乱を招く恐れがある」と対応を検討していない。東京書籍側も、盗用は遺憾としながらも「権利関係など、あくまで(自由社と)2者間の問題。他者を巻き込むことは是としない」と、新版に限って年表の差し替えを要求している。

■「信用できぬ」

 取り残されてしまったのは、横浜市立中学校の3万人近い生徒たち。10年度から使用されている教科書は、卒業まで使うことが決まっている。

 「これでは教科書が信用できなくなってしまう」。自由社の歴史教科書で教える市立中学の50代男性教諭はため息交じり。昨年、掲載内容に誤りがあったとして正誤表が配布されたばかりで、「子どもに教える教科書としてふさわしいのか疑問だ」。ただ生徒たちにそう伝えるのは「あまりにも忍びない」。副教材も活用し授業展開を模索しているという。

■「問題はない」

 横浜市教委は「現行の教科書を使い続けることについて、文科省も問題ないとしており、法に照らしても市教委として取るべき措置はない」としている。

 横浜市教委は09年8月、市内8区で現行版を採択。4日、全市一括採択に制度変更した12年度から使用する中学校の教科書採択を行う。


平塚中等学校で「育鵬社」の歴史教科書使用、新1年生から/神奈川

神奈川新聞 2011年8月3日

 県教育委員会(平出彦仁委員長)は2日、定例会を開き、県立平塚中等教育学校前期課程(中学相当)で来春から4年間使用する歴史教科書について、国を愛する心を育むことを主眼に置く育鵬社版を採択した。県内で同社の教科書が採択されるのは、藤沢市(歴史・公民)に次いで2例目。

 定例会では、同校と相模原中等教育学校の9教科15種目の教科書が採択された。

 在校生は現在の教科書を継続して使うため、育鵬社の歴史教科書は来春入学する新1年生(160人)から使用される。

 県立学校の教科書は、各校の使用希望を受け、県教科用図書選定審議会が県教委に答申する。平塚中等教育学校は育鵬社の「中学社会 新しい日本の歴史」を希望していた。

 先月26日の県教委臨時会で「目指す生徒像と教科書の希望理由の関連が不透明」などの疑問が挙げられ、継続審議となっていた。

◆「使いやすい」全会一致で 学校の意向重視

 歴史認識をめぐって論争が起きている育鵬社の歴史教科書が2日、県立平塚中等教育学校(平塚市大原)で使われることが決まった。県教委は「学校現場の意向を重視して採択した」としている。

 この日の委員会には、定員15人に97人が傍聴を希望。同校が目指す教育や教科書選定経過について報告を受け、6人の教育委員が意見を交わした。

 倉橋泰委員(情報誌「ぱど」社長)は「先生が使いやすい教科書がいい。任せるべきだ」と表明。平出彦仁委員長(相模女子大客員教授)は「現場の先生の意向を踏まえないで決めるのはおかしい。先生が良いと思う教科書が選ばれなければいけない」などと述べ、学校の意向を重視するよう求める声が相次ぎ、全会一致で育鵬社の教科書を採択した。

 委員会では教科書の記述内容や歴史認識については議論されておらず、採択に反対するグループは抗議集会を開催。「戦争を肯定的に記述し、見本本と同様の本を市販し教科書宣伝するなど、教科書発行者の倫理観も欠如している」などと批判する声明を出した。


【教科書を考える】市民交流で友好紡ぐ 認識共有へシンポ

朝日新聞地方版 2011年08月03日

 2005年に「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された扶桑社版の歴史教科書が採択された東京都杉並区。教科書問題は学校にとどまらず、地域や近隣諸国との関係に、大きなしこりを残してきた。つくる会系の教科書は地域に何を残したのか。

 「教科書で習った内容が違って、将来、韓国と日本の子どもがけんかにならないように」――。

 7月16日に杉並であった「杉並・ソチョ シンポジウム〜真の友好をめざして歴史認識の共有を」。市民団体が開いたシンポ会場は約200人で埋まった。杉並と友好都市関係にあるソウル市ソチョ区の区長からメッセージが届き、区議や教員も駆けつけた。

 ソウル市から来たキム・ハギュンさんは、両親が強制労働を経験した。「日本人は侵略を隠そうとする人ばかりと思っていたが、交流を通して考えが変わった。敵対心ではなく友情関係こそ大切」と話した。

 杉並とソチョの市民交流は、採択前の05年にソチョ区長が来日したことがきっかけになった。松下政経塾出身で「日本人の誇りを回復する」などの発言が目立つ山田宏区長(当時)への危機感が後押しした。

 「近隣の国から日本はどう見られているのか。相手の気持ちに寄り添おうという気持ちから始まった」と、元小学校教諭の長谷川和男さんは振り返る。

 シンポ会場からは「信頼、友好を深めよう」との声が相次いだ。マイクを握った長谷川さんは「自国の都合で歴史を変えていいはずがない。交流を通して歴史認識を共有しあうことの大切さを感じています」と語りかけた。

     ◇

 横浜市在住の李相哲さん(49)は子どものころ、札幌市の公立小中学校で日本人の子と席を並べた。「当時の教科書はアジア蔑視の表現が多かった」。歴史の授業では下を向いてしまうこともあり、「嫌な記憶」として残っている。

 日韓交流が進み、教科書の内容も「良くなっていった」と感じていた。それだけに、2年前の横浜市での自由社版採択はショックだった。「ほとんどの在日韓国人の子どもは公立中に通っている。教科書の内容によって差別や偏見が生まれないか心配。自分と同じ思いはさせたくない」

 今回の採択を前に、韓国の仁川市長と釜山市教育長から横浜市長らに手紙が送られた。そこには、こう書かれていた。「積極的な交流を通して相互発展ができると望んでいます」「両国の青少年たちが歴史を正しく知り、自負心を持つことができるよう、お願い申し上げます」

 杉並区の05年の扶桑社版採択は、教育現場にも影響を与えた。区立中の女性教諭が校長に「この報告書はまずい」と書き換えを指示されたのは同年7月末。採択の参考にされる各教科書の所見欄に「適切」「やや適切」「適切でない」と書き、提出済みだった。

 「区教委が過敏になっている。順位が分からないようにしてほしい」と言われ、「適切でない」を「情緒的で科学的なとらえ方がされていない面が多い」と書き換えた。組合を通して告発すると、区教委や校長に呼ばれて「守秘義務違反だ」と指摘された。

 扶桑社版を使い始めてからプリント中心の授業をすると、校長が教室の後ろに立った。「まずいよ。合計3分30秒ほどしか教科書を開いていない」と言われた。その後、区内の社会科の定期テスト用紙は、区教委に提出させられるようになったという。

 「教科書が首長の宣伝に使われ、現場は混乱し、子どもが犠牲になった」。翌春、この教諭は多摩地区に転出になった。(佐藤善一、古沢範英)

 県教育委員会は2日、中高一貫の県立中等教育学校2校で来春から使う教科書を原案通り採択した。歴史教科書は平塚校が育鵬社、相模原校が日本文教出版と決まったが、他社版も置くよう要望があり、教委事務局も検討を約束した。

 事務局は、平塚市と周辺市町村の生徒が6割を占める平塚校は「地元に根ざす」方針から神奈川に関する記載が多い育鵬社を選んだ、などと説明。平出彦仁委員長は「積極的な選択の理由としては不十分」としながらも了承し、6人の委員全員が賛成した。

 ただ、委員から「歴史に様々な見方があるとわかる資料として、ほかの教科書も両校に配備しては」との提案があり、志摩尚平支援教育部長は「恐らく可能」と回答した。

7月にあった「杉並・ソチョ シンポジウム」。韓国の地方議員や教師らも駆けつけた=東京都杉並区
7月にあった「杉並・ソチョ シンポジウム」。韓国の地方議員や教師らも駆けつけた=東京都杉並区


【神奈川】「つくる会」系に賛否 中学の歴史、公民教科書

東京新聞 2011年8月2日

 横浜市教育委員会が四日、市立中学校で二〇一二年度から使用する歴史と公民の教科書を採択する。前回の〇九年には全国で初めて、一部の学校の歴史教科書について「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した自由社版を採択。今回、同会から分裂した育鵬社の教科書も審査の対象で、現在両社の教科書採択に対し、賛否の声が市教委に届いている。(荒井六貴)

 市教委事務局によると、今回、採択される教科書は中学校の十五科目など。中学の歴史と公民は、文部科学省の検定を通った自由社や育鵬社など七社から、市教委(今田忠彦委員長)の六人が、それぞれ一社の教科書に絞り込む。

 今田委員長は前々回の〇五年度、ただ一人、つくる会の教科書を推したが、不採択に。今田委員長を除く委員五人が入れ替わった前回の〇九年に、市内八区で使うことが決まった。今回は採択方法が変わり、全十八区で同じ教科書を使うことになり、全国で最も多い中学校の採択地区となる。

 今田委員長は昨年十二月、市議会で「自由社版は、他と比べても日本文化の取扱量が多く、質も優れている。横浜の子どもが学ぶのにふさわしいと判断した」と答弁した。

 そうした経緯を踏まえ、同市内の市民団体「横浜教科書採択連絡会」の担当者は「これまでの市教委は『つくる会』の教科書を採択するための布石を打つような動きをしてきた。今田委員長が交代していない」と警戒する。国内外で集めた署名約十万六千人分とともに二社の教科書を採択しないよう市教委へ求めた。

 藤岡貞彦・一橋大名誉教授(教育社会学)=横浜市中区=らも七月下旬、市内在住・在勤の弁護士や元外交官ら二百三十人と連名で「戦前日本の植民地支配を美化するなど、異様な歴史観に貫かれている」と、採択に反対する声明を市教委に提出した。

 自由社や育鵬社の教科書を支持する人からは「領土問題をしっかり記述している」などと、両社の採択を求める要望も市教委に届いている。

 市教委事務局は「毎日、教科書に関する多くの要望が寄せられるが、(賛否の)どちらが多いとは言えない。要望や請願は委員に報告しているが、影響は分からない」と指摘している。

自由社と育鵬社の教科書を採択しないことを求めて会見する藤岡名誉教授(左から2人目)ら=横浜市中区で
自由社と育鵬社の教科書を採択しないことを求めて会見する藤岡名誉教授(左から2人目)ら=横浜市中区で


【教科書を考える】教育委員会 教科書採択権限、行使に濃淡

朝日新聞地方版 2011年08月01日

 教科書採択の権限を持つ教育委員会は、専門家でつくる審議会の答申を尊重するケースが大半だが、時に疑問を呈したり結論を覆したりする。いかに権限を行使し責任を果たすか、あるべき姿について各地で模索が続いている。

 県教委は7月26日、県立の中高一貫校2校で来春から使う教科書を検討したが、「資料不足で判断できない」と結論を先送りした。審議会の答申は両校の希望に沿い、平塚校の歴史教科書は「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版を推す内容だった。

 同社の教科書に対しては、市民らから不採択を求める請願が多数出ていた。委員は「検定を通っており、特定の出版社排除は不公正」などの理由で請願を退けたが、配慮も見せた。平出彦仁委員長は「静謐(せい・ひつ)とは言えない環境で、それでも選ぶなら根拠が欲しい」と発言。県教委は、各校での審議経過を追加資料として求めた。

 委員の一人は、相模原では選定に高校側の教諭も参加したが、平塚校では関与していない点について「中高の接続を意識し、高校の視点があった方がよい」という指摘。「ビジュアル面や分かりやすさに限らず、考える力を与えるという目的を踏まえて判断したい」と話す委員もいた。

 県外では育鵬社版を推す審議会答申を覆した例もある。7月下旬に開かれた栃木県の下野市教委では、「育鵬社は『自虐史観を修正する』と主張する。その核心部分について議論していない答申は、そのまま通せない」という意見が出て議論が白熱。南京事件や沖縄戦での各社の記述を比較したうえで、賛成多数で他社版が選ばれた。

 永山伸一委員長は「委員会は権限を与えられている以上、議論を尽くす責任がある」と話す。

 横浜市教委は2年前の採択で、審議会の答申に反して「つくる会」系の自由社版を採択している。中嶋哲彦・名古屋大学大学院教授(教育行政学)は「答申の審議過程に疑問があれば指摘するのは教育委員会の責任だが、それと恣意(し・い)的に権限を行使することは違う」と指摘する。

 中嶋教授は「公正な審議に基づく答申ならば、それを覆すには審議会以上に専門的で十分な議論をすべきだ。教育委員会は自らの権限行使について、厳しく自己抑制する責任感が求められる」と話している。(織井優佳、古沢範英)


他社教科書の歴史年表流用 「つくる会」系、自由社版

神奈川新聞(共同通信) 2011年8月1日

 「新しい歴史教科書をつくる会」が主導し、今春の教科書検定に合格した自由社(東京)の中学歴史教科書の2012年度版が、日本史年表のほぼ全部を東京書籍の教科書から流用していたことが1日、分かった。

 文部科学省が注意し、自由社は訂正申請するという。

 自由社によると、10、11年度版や、今年5月に発売した市販本でも流用していた。同社は編集著作権を侵害したことを認め、東京書籍に謝罪。横浜市立中学校など使用中の学校や教育委員会にも謝罪と経過報告を記した手紙を送った。市販本は回収を始めた。

 基になったのは東京書籍の02年度版の年表。


県内初の育鵬社版教科書採択で「決定を尊重」と海老根藤沢市長/神奈川

神奈川新聞 2011年7月30日

 藤沢市の海老根靖典市長は29日、市教育委員会の28日の定例会で、来春から市立中学校で使う歴史と公民の教科書に県内で初めて育鵬社版が採択されたことについて「教育委員会は行政と対等な立場にある。決定を尊重したい」と述べた。

 海老根市長は「藤沢では昔から教育の独立が守られてきた。私どもの意見をはさむということはない」と説明。佐々木柿己教育長が歴史・公民の審査で事実上棄権し、意見を述べなかったことには「各委員の意見を聞いて判断したのだと思う。意思を表明しなかったのは、そういう意見を尊重したのだと(思う)」と述べた。

 また、同社版の歴史・公民の教科書について「検討された7つの教科書は全て文部科学省の検定を受けている立派な教科書。平和のとらえ方はさまざまだが、同社版も平和については大変重点を置いているとは考えている」とした。


藤沢市教委教科書採択、「つくる会」系の育鵬社に/神奈川

神奈川新聞 2011年7月29日

 藤沢市教育委員会は28日の定例会で、来春から市内のすべての市立中学校で4年間使う歴史と公民の教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版を採択した。同社版は県内初。

 採択は合議制で行い、4委員と委員長の計5人で審議。4人のうち佐々木柿己教育長は、歴史・公民の審査で「教育現場の担当者として意見の食い違う教科書が選ばれることは現場に混乱をもたらす。議論を見守りたい」などと事実上棄権し、意見を述べなかった。

 歴史・公民の審議は、いずれも七つの出版社の教科書を検討。小澤一成委員長、赤見恵司委員、藤崎育子委員が育鵬社版を推し、渋谷晴子委員は別の歴史・公民教科書を推した。

 小澤委員長は育鵬社の歴史教科書について「登場する人物が一番多い」、赤見委員は「読み物風のコラムがあり親しみやすいこと」などを採択理由に挙げた。これに対し、渋谷委員は「過去の戦争に対する反省がおざなりになった内容。藤沢市のこれまでの取り組みとも合致しない」としたが、最終的に「議論の結果に従う」とし育鵬社版で合意した。

◆判断に波紋広がる

 藤沢市立の全中学校で育鵬社の歴史と公民の教科書が使われることが決まった。歴史認識をめぐって論争が起きている教科書採択に踏み切った市教委の判断に波紋が広がっている。

 育鵬社の教科書採択に反対してきた琉球大学の高嶋伸欣名誉教授は「多くの市民団体が問題点を指摘している中で(育鵬社教科書を)採択した教育委員の見識に驚いた」と話す。教科書の内容について「自己中心的なナショナリズムに固執したもの」と憤る。

 市立中学校の教諭の一人は、第2次世界大戦が「自存自衛のため」と書かれていることを問題視する。「戦争を正当化し、植民地による近代化の功績を強調している。支配下にある人々の苦難に触れていない」と批判する。

 一方、育鵬社教科書の執筆者で高崎経済大の八木秀次教授は執筆の目的を「日本文明の独自性を明らかにすること」と説明。「日本の豊かな文化や長い歴史に自信を持つ生徒が増えてほしい」と話している。

 教科書採択を異例の継続審議としている県教育委員会は、8月2日の定例会で再審議する見通し。2009年に「新しい歴史教科書をつくる会」が主導する自由社の教科書を採択した横浜市も、8月中に採択を予定している。

◆解説

 藤沢市教育委員会が育鵬社の歴史と公民の教科書を県内で初採択した。2012年度から、市内の中学19校で同社の「新しい日本の歴史」と「新しいみんなの公民」が使われる。

 09年横浜市の8区で採択された自由社版が、「応仁の乱」の写真裏焼きなど基本的ミスを多数指摘されたことを踏まえて、育鵬社版は「教科書は学説の主張の場ではない。人物や歴史絵巻などを多くして分かりやすさを心がけた」(八木秀次執筆者)としている。

 同日、東京都教委も都立中高一貫校10校で育鵬社版を採択した。県内でも県教委の平塚中等教育学校用、横浜市教委の全区一括の各審議が予定されている。

 教育委員は地域の教育に対して責任を持つ立場にある。審議プロセスや採択理由を分かりやすく説明する義務がある。

 また学校現場は、単に「教科書を」教えるのではなく、争点ある事項では「複数の視点」を示し、科学的思考を学ぶ実践を重ねてほしい。教師の力量が問われている。


歴史・公民は育鵬社

朝日新聞地方版 2011年07月29日

 藤沢市教育委員会(小沢一成委員長、5人)は28日、来春から市立中学19校で使う歴史と公民の教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版を採択した。同社版の採択は県内初。

 この日の定例会では、同社版の歴史教科書について「歴史上の人物が数多く取り上げられるなど深く掘り下げられている」、公民も「拉致問題を一番大きく取り上げている」との意見が出た。小沢委員長ら3人が育鵬社版、1人が他社版を推し、教育長の佐々木柿己委員は意思表明しなかった。この結果、育鵬社版に決まった。

 記者会見では、歴史と公民を選ぶ協議中に佐々木教育長が下を向き、一切発言しなかったことに質問が集中した。佐々木教育長は「事前の話し合いで(育鵬社版になる)結論が見えていたので見守らせてもらった」と弁明。「無責任すぎるのでは」の声には「そうは思わない」と話した。


歴史、公民教科書 育鵬社版を採択 藤沢の市立中

東京新聞地方版 2011年7月29日

 藤沢市教育委員会(小沢一成委員長)は二十八日の定例会で、市立中学全十九校で二〇一二年度から使用する歴史と公民の教科書に育鵬社(扶桑社の子会社)版を採択すると決めた。

 小沢委員長と委員三人に佐々木柿己教育長を加えた五人の合議で決まった。市教委によると、小沢委員長を含む三人が育鵬社を推し、別の社を推した一人も、育鵬社の採択に意義を唱えなかったという。佐々木教育長は意見を述べなかった。

 佐々木委員長は「私が育鵬社以外を主張すると、中学生は『教育長が反対した教科書』で学ぶことになってしまう。今回は審議を見守ることがベスト、と判断した」と話している。


【教科書を考える】歴史教育、戸惑う教師

朝日新聞地方版 2011年07月28日

 横浜市では昨年から8区の公立中学校で、自由社の歴史教科書を使っている。既存の教科書を「自虐史観」とする「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した教科書の内容に、戸惑う教師たちがいる。

■資料補足し教材工夫

 昨年4月。1学期が始まる直前、40代の男性教諭は自由社の歴史教科書を初めて手にし、強い違和感を覚えた。日本神話のコラムが大量に載っていたからだ。「生徒が神話と歴史的事実を混同しないだろうか」。同時に、太平洋戦争を「大東亜戦争」と強調するなど「価値観の押しつけでは」とも感じた。

 授業を始めると、戸惑いはさらに強まった。5〜6世紀に大陸から移り住んだ「渡来人」を「帰化人」と黒字太字で表現するなど、語句や史料の使い方も、これまでに使った教科書とかなり違う。それに加えて、写真の裏焼きや単純な事実関係の間違いも他の教科書と比べて多かった。

 他社の教科書で必ず学ぶ内容も抜け落ちていた。江戸時代は「平和と安定」の時代とされ、重い年貢に苦しむ農民たちの実態がほとんど描かれない。生徒たちには、一揆などで用いられた「傘(からかさ)連判状」の資料を示して、武士による支配と団結して対抗した農民のことを説明した。「欧州の市民革命や産業革命の項目でも、民衆の状況の説明が非常に少ない」と話す。

 授業で自作プリントを配るなど、この男性教諭のように補足説明に工夫を凝らす教師は多い。50代の女性教諭は教員仲間で作った研究資料2種類と以前教えていた歴史教科書を参照しながら、自由社版を読み込む。ざっと読んだだけでは気づかないこともあるからだ。「以前よりも、教材研究に多くの時間を取られるようになった」と話す。

 市教委は昨年4月、各校長に「採択した教科書を必ず使用しなければならない」と通知した。「現場に無言の圧力になっている」と困惑する教師は多い。

■問題意識 世代で差

 自由社の歴史教科書の特色は、検定が不要な「教師用指導書」ではさらに強調される。例えば「アメリカと戦争が始まったことを知った国民の多くはどう思ったか」という3択問題。正解は「スカッ、と晴れやかな気分になった」で、「怒った」と「悲しんだ」は不正解となる。「破竹の進撃」をした東南アジアでの日本軍の占領で「一般住民を数多く処刑した」は「×」だ。

 長年にわたって社会科を担当した市立中学校の元校長は「『スカッ、と晴れやか』以外を誤りとするのは、多面的な見方を育てるという教育の目標と対極にある」と批判する。

 だが、こうした問題意識は若い世代を中心に希薄になっている。40代の男性教諭は、教科書や指導書を手にした教育実習の男子大学生から「どこが間違っているんですか。わかりやすくていいじゃないですか」と言われた。この指導書を職員室の机の上に常備している教師もいるという。

 教師の意識の変化には、教科書採択制度が変わったことも影を落とす。横浜市では以前、採択に学校現場の意見を反映させる「学校票」があった。教師たちは採択前に市内数カ所で開かれる教科書展示会に行き、教科書を読み比べて検討。地域性なども考慮して希望する教科書を挙げていた。

 だが、2001年に「学校票」は廃止。代わりに各区校長会が検討し、報告することになったが、それも05年には廃止された。

 「多くの教員が展示会に行かなくなり、教科書を話題にすることもなくなった」と、ある男性教諭は嘆く。

■現場の声が届かない

 横浜国大付属横浜中学校(横浜市南区)は、教師たちが内容を検討した上で使用する教科書を決める。

 社会科担当の30代の男性教諭は「そもそも教科書は記述がまとまりすぎ、使いにくい」と話す。「歴史授業の本質は、どんな視点を基軸にして過去を判断するかを考えさせる点にある。権力者の記録である『史実』の裏側も示すために、副教材のプリント作りは欠かせない」

 そんな教諭の授業に、若い同僚や教育実習生が「歴史って面白いんですね」と、今更のように感心するという。「いろいろな視点から見る訓練をしてないんだ、と痛感する。世の中全体が一方向へと流される危険なムードの今、教室はいろんな意見が自由にぶつかりあう場でありたい」

 公立中学で使う教科書の選択に、現場の声が反映されない仕組みには疑問を感じている。「学校は公共とは何かを教える場。保護者ら周囲の大人や社会全体が、教科書をめぐって学校現場で起きていることに関心を持ってほしい」(星井麻紀、織井優佳)

 約120人の弁護士が所属する自由法曹団神奈川支部は27日、「歴史や憲法の見方があまりに一面的」として、自由社と育鵬社の中学歴史・公民教科書を採択しないように、横浜市教育委員会に要望した。過去の採択に際し、教育委員の無記名投票が拡大していることについても「密室性、不透明性が増す」と批判、透明で公正な手続きをとるように求めた。

 歴史学研究会(委員長=池享・一橋大学大学院教授)など歴史関連の4団体も「育鵬社版・自由社版教科書は子どもたちに渡せない」とする緊急アピールを共同で発表した。

 アピールでは、近代の戦争を日本の正当化に終始する自国中心の記述にとどまっているなどと批判した。

社会科教師自作のプリントが貼られたノート。子どもたちの知識定着を図るため、教師は知恵を絞る=横浜市内
社会科教師自作のプリントが貼られたノート。子どもたちの知識定着を図るため、教師は知恵を絞る=横浜市内


一貫校2校教科書 採択結論持ち越し

朝日新聞地方版 2011年07月27日

 県教育委員会は26日、来春から中高一貫の県立中等教育学校2校で使う教科書採択について、「資料不足で判断できない」と継続審議にした。両校での議論内容など、追加資料の提出を待って8月2日に改めて審議する。

 この日は、平出彦仁委員長ら6人の委員が県教科用図書選定審議会の答申を検討した。答申は平塚、相模原の両中等教育学校の希望に基づき、平塚は育鵬社、相模原は日本文教出版発行の歴史教科書を推した。

 両校の希望が歴史以外でも大きく異なったため、15日の同審議会でも各校の目標などの差異がわかる資料を求める意見が出た。そこでこの日は両校の「教育理念」「専門委員会の構成」「審議過程の意見」など、A4判1枚が加わった。

 しかし、平出委員長は「資料の充実度などで2社の歴史教科書が残ったところまでは両校で同じなのに、最終的な選択が分かれたことと各校の目標や特性とのつながりが不透明」と指摘。「無視できない数の請願があり、名指しで不採択を求められた本が希望された中にある以上、自信を持って判断するには資料が足りない」として、この日の結論を避けた。

 そして「理科や国語など他教科の審議」「社会科教育で中学と高校の接続をどう考えているか」「生徒・地域特性の差を選択にどう結びつけたか」について、両校の専門委員会での具体的な議論経過をまとめた資料を出すように、事務局に求めた。(織井優佳)


5市教委が無記名投票、教科書採択めぐりかながわ市民オンブズマンが調査結果公表/神奈川

神奈川新聞 2011年7月25日

 県内各教育委員会による教科書採択をめぐり、かながわ市民オンブズマンは25日、横浜市など5市教委が無記名投票で採択しているとする調査結果を公表した。同オンブズマンは「教育委員の判断を永久に葬る方法」と問題視し、改善を求めている。

 調査結果によると、県と県内33市町村の各教委のうち、2009年4月から11年1月の間に無記名投票による採決が行われたのは横浜、大和、海老名、座間、秦野の5市教委で、案件はすべて教科書採択だった。ただ、海老名市教委は本年度から記名投票に切り替える方針という。

 同オンブズマンは無記名投票について、「各委員の責任を不明確にし、事実を闇に葬る極めて無責任な行為」と指摘。海老名市教委を除く4市教委に対し、各教育委員の判断を明らかにするとともに、無記名投票を実施しないよう求める要望書を提出した。


【教科書を考える】「改革派」市長で教委変化

朝日新聞地方版 2011年07月16日

 公立学校でどの教科書を使うかの決定権は各地方自治体の教育委員会が持つ。実際には教員や学識経験者でつくる審議会の答申が尊重される例が大半だが、横浜市では2009年、答申で評価が低かった自由社版の中学の歴史教科書が8区で採択された。教育委員が自らの意思を前面に出した結論には「改革派」市長の登場という伏線があった。

 ある教育関係者が知人の横浜市議に声をかけられたのは、中田宏前市長の1期目半ばのことだった。前市長派だった市議の事務所で「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を渡され、「面白いですね」と感想を話した。世間話だったが、しばらくして市教委から連絡があり、教育委員への就任を打診された。「こんな裏側で人選が進むとは、予想もしてなかったので驚いた」と振り返る。

 教育委員6人は従来、学識経験者や校長会長経験者らの「指定席」に近い形で構成されてきた。実質的に機能していないとの批判がある一方、市長の教育行政への介入を避ける役割を果たしてきたとも言われる。

 それが変わったのは「改革」を掲げた中田氏の市長就任後だ。中田氏は、「日本人が誇りに思える歴史教育」の必要性が持論だ。委員は次々と交代した。中田氏は、面識があり日教組批判などでも知られる「ヤンキー先生」義家弘介氏=現・自民党参院議員=を05年招くなど、自らの人脈を動員した。

 中田氏の肝いりで顔ぶれが一変した委員会はさまざまな施策を打ち出した。校長の人事権を強化し、学校運営を補佐する主幹教諭を設置。05年には県内で初めて公立中学校に民間人校長を登用した。校長経験もある元市教委幹部は「校長会や教職員組合との調整なしに現場へ指示を出すことが急増した」と話す。

 09年6月の市議会で中田氏はこう答弁している。「事務局から出てきたものを追認するのではなく、大いに議論する人選を提案してきた。教育委員は全て入れかわり、今は活発な議論をやってくれている」

 自由社の歴史教科書が市内8区で採択されたのは、この答弁の2カ月後だった。

 09年、専門家らでつくる市教科書取扱審議会の答申を押し切る形で自由社版の採択を主導した今田忠彦教育委員長は「最終的な権限は議会に選ばれた我々にある」と強調する。

 教育委員は首長が任命し、議会の承認が必要となる。だが、横浜市議会では経歴などの資料が配られるだけで、市側の提案がほぼ自動的に承認されてきた。ある市議は「性善説で承認してきたので、専門家の答申を無視する事態は想定外だった」と話す。

 今春まで民主市議だった高梨晃嘉さんは「結果的に見て議会はチェック機能を果たせなかった。各委員の教育観などについてもっと説明するよう求めてきたが、議会内に浸透させられなかった」と話す。一方で、今田氏の主張には「教育委員会の制度を隠れみのに、教室へ政治的思惑を持ち込むことは許されない」と反論する。

 林文子市長は6月の記者会見で「審議会や調査員の多くの方の意見を採り入れて採択されると考えている」と述べ、審議会の答申を尊重するのが望ましいとの立場をにじませている。(古沢範英)

■平塚中等教育学校で「育鵬社」を推す答申 / 県教科書選定審

 県教科用図書選定審議会(会長=永妻和子横須賀市教委教育長)は15日、県立の中高一貫校、平塚中等教育学校の歴史教科書を「つくる会」系の育鵬社とする答申案を承認した。

 県立学校の教科書採択権は県教委にあるが、神奈川では学校ごとの使用希望を尊重している。県教委から各教科書の資料を各学校に送り、平塚中等の校長と教員らが協議した結果として育鵬社を希望する回答が審議会に届いたという。もう一校の県立中高一貫校、相模原中等は歴史に日本文教出版を選んだほか、両校の希望教科書は、ほとんどの教科で異なった。

 審議会では育鵬社が選ばれるまでの議論の過程や、両校が目指す教育理念の違いなどを明示してほしいという要望が委員から出た。このため「公正な採択には議論の透明性が大切」と答申に詳しい説明を添えることが決まった。今後、加筆された答申をもとに、県教委が判断する。

■活発な議論へ任命 採択に介入は禁物 / 中田前市長

 ――つくる会系の社会科教科書は「戦争賛美」との批判があります

 「どの教科書も少なくとも戦争賛美ではない。自虐史観的な教科書はかつてあったが、同会が一石を投じたことで減ったと思う。歴史は見る側によって解釈が違う。バランスがとれた見方ができる人間を育てる教科書が必要だ」

 ――中立のはずの教育委員会をどう変えようとしたのですか?

 「委員が医師会や校長会の『当て職』で選ばれ、形骸化していた。事務方の議題を了承するだけでなく、議論する環境づくりを意識して委員を選んだ」

 「私の意見の押しつけではない。それぞれの見地で発言できる人、私立・公立の両方に子がいる親や、自らの体験をもとに教職についた義家さんら、多彩な顔ぶれをそろえた。(校長会や教組など)現場の意見ばかり採用されては、委員会の制度が骨抜きにされる」

 ――横浜の教育をどう変えようとしたのですか?

 「子どもを自立させるのが教育。意見を表明し、義務を果たせる人間に育てる。教科書については、どの社がいいとは言わなかったが、しっかり考えさせるものを選ぶべきだとは委員たちにも話した」

 ――09年に8区で自由社版を採択したが、審議会の答申と食い違う結果では?

 「教育委員が展示会などで検討し、適切な教科書は何かを真剣に議論した結果だと思う。」

 「今夏の採択も委員会の議論の結果をしっかり出せばいい。(つくる会系教科書に)賛成・反対いずれの陣営も市長や議会も、政治的介入をすべきではない」

中田宏前市長
中田宏前市長


市教委に7万人の署名添えた要望書、自由社と育鵬社教科書不採択を/横浜

神奈川新聞 2011年7月11日

 自由社と育鵬社の中学校歴史・公民教科書を採択しないよう求め、市民団体「横浜教科書採択連絡会」(事務局・佐藤満喜子さんら)が、7万7724人分の署名を添えた要望書を横浜市教育委員会に提出した。

 要望書では、自由社と育鵬社の教科書について「過去の戦争を肯定的に記述している」と批判。「教職員や学校の意見、審議会の答申を尊重し、採択にあたっては公正・公平・公開を貫いてください」としている。

 署名は同団体が横浜市内の街頭などで5月下旬から集めていた。中学校教科書の採択は今夏、県内全域で行われる。


【教科書を考える】採択へ差別化図る

朝日新聞地方版 2011年07月07日

 横浜市などで、今夏の採択に向けた検討が続く中学校の教科書。来年度から実施される新学習指導要領に沿った内容での初の採択となる。教科書はどのように作られるのか、なぜ出版社によって「特色」が生まれるのか。

 今回の採択対象となる教科書は、文部科学省が2008年に告示、12年春に実施の新学習指導要領に沿った各社の新版。中学校の社会科・歴史的分野では、昨年度の同省による検定で合格した東京書籍、教育出版、清水書院、帝国書院、日本文教出版、自由社、育鵬社の7社が対象となる。

 各社とも、計130時間分の授業内容を250ページ前後に収容する。古代から現代までを網羅するため、事実を圧縮して列挙する本文の記述は「無味乾燥になりがちで、出版社によって大差はない」(ある出版社幹部)という。

 それでも通読すれば違いに気づく。例えば本文とは別の「コラム」には、その社の編集方針が表れる。古代から現代までの時代ごとに、どれほどの紙幅を割くかの配分にも差がある。教科書作りの中で、その相違点はどのようにして生まれるのか。

 多くの出版社では教科の専門家と教育学の研究者、教員ら15人前後の編集委員会で1年半ほど合議し、記述や構成を練り上げる。委員の人選は所属大学や居住地、思想的な偏りがないようにするのが一般的だ。委嘱前にはその人の論文などにも目を通す。

 ある社の担当者は「研究上の主張は控えてもらい、書き直しも4回はお願いする。新しく参加した学者は必ず一度は怒ってしまうほどです」。

 別の大手役員は「教科書は報道や言論の手段ではない。偏らない立場から大局的に歴史を見つめ、自分の立ち位置を知るという狙いを実現する教材。日本史が必修なのは中学までなので特に重要」と話す。

 しかし、採択には他社との差別化も必要になる。そこで、各社は「注目してほしい事柄」「関心を持って考えてほしいテーマ」を選び、本文とは別にコラムを設けている。

 例えば、ある社では世界各国で多文化共生を目指す現代の状況を踏まえ、日本史の中に琉球王国やアイヌ民族を位置づけて解説。別の社では「環境問題」「男女平等」など、現代につながる課題が、どの時代から芽生えたのかを紹介。歴史学界の新しい見解を意欲的に取り入れ、大人にも読み応えのある内容にする社もある。「事実を淡々と伝えようとする点は同じでも、細部で特色を出すのが教科書の世界です」

 一方、育鵬社は「日本をもっと好きになる教科書を」「教育から日本を良くする」という明確な目的を掲げる。執筆者はこの方針に賛同する14人。伊藤隆・東大名誉教授を中心に、八木秀次・高崎経済大教授、渡部昇一・上智大名誉教授らが名を連ねる。

 親会社の扶桑社は「新しい歴史教科書をつくる会」と共に教科書を出し、00年度と04年度の検定で合格したが、採択率は低迷した。そこで今回は「つくる会」と決別。他社版を研究し、編集部主導で一般書籍の編集手法を持ち込み、分かりやすさを狙ったという。

 漫画調のイラストを満載し、章ごとに出来事を要約した絵巻や穴埋め形式のまとめを配置。人物紹介のコラムも多く、勉強が苦手な子の興味を引くあの手この手を凝らしている。

 一方で全225ページのうち112ページを割いた近現代で「大東亜会議」に言及。「東京裁判」「昭和天皇」を大きくコラムで扱うなど、他社にない切り口が際だつ。

「扶桑社時代の旧版は『子どもに何を学んでほしいか』の主張が前面に出すぎ、どう学ぶかの工夫が少なかった。教材としての完成度を上げ、採択率を上げたい」と育鵬社の真部栄一教科書事業部長は話す。(織井優佳)

■修正重ね検定合格

 日本の教科書は民間会社が発行し、原則4年に1度の文科省の検定を合格したものを使う。一方、学習指導要領は約10年ごとに改訂される。改訂の告示直後の検定は、新要領に沿って大改訂された教科書が対象で注目度が高い。

 大学教授や現場の教員らも参画する検定に一発合格は少なく、ほとんどは修正を求める「検定意見書」が出される。単純な誤記から学術的な異論、教材としてのわかりやすさまで指摘はさまざま。100カ所以上指摘を受けた例もある。発行会社は繰り返し修正表を出し、再審査を経てやっと合格となる。この中から検定の翌年、地方自治体が公立学校で使用する教科書を採択する。

中学歴史・公民教科書が並んだ教科書展示会=横浜市中区
中学歴史・公民教科書が並んだ教科書展示会=横浜市中区


市民団体が自民横浜市議団などに「特定の教科書宣伝の場提供」とする抗議声明/横浜

神奈川新聞 2011年7月5日

 今夏の中学校教科書採択を前に、自民党横浜市議団と同党横浜市連政務調査会が教科書執筆者を招いた勉強会を開催したことに対し、市民団体「横浜教科書採択連絡会」(事務局・佐藤満喜子さんら)が5日、「特定の教科書の宣伝の場を提供した」とする抗議声明を出した。

 声明文は、複数の社の教科書執筆者を招くなどして「公平性を担保した形式で行うべきだった」などと指摘している。

 一方、市議団の佐藤祐文団長は「勉強会を開いただけで、抗議を受ける覚えはない」としている。

 勉強会は6月22日に開かれ、「新しい歴史教科書をつくる会」の元会長で、育鵬社の歴史・公民教科書執筆者の八木秀次さんが講演。市民や市議ら約150人が参加した。


教科書調査員名簿開示訴訟、横浜市が控訴断念/横浜

神奈川新聞 2011年6月30日

 横浜市の教科書採択を前に内容を調査し報告書を作成する「教科書調査員」の名簿を開示するよう命じた横浜地裁判決について、同市は控訴期限の29日、控訴しない方針を固めた。30日に確定する。

 訴訟はかながわ市民オンブズマンのメンバーが原告。同市は「判決を尊重して開示の手続きを進めるが、調査員の調査環境の保護については引き続き努めていきたい」と説明。同オンブズマンは「すみやかに開示手続きが進んでほしい」としている。

 市側は「名簿が公開されると教科書会社から調査員に宣伝行為がある」などとしていたが、15日の判決は市の主張を「抽象的な可能性を指摘するにすぎない」と退けた。確定を受けて同市が名簿を開示すれば、県内のすべての自治体で調査員名簿の閲覧が可能となる。

判決の記事はこちら


【教科書を考える】「地区一本化」採択に注目

朝日新聞地方版 2011年06月30日

 2012年度から公立中学校で使われる教科書が今夏、県内27の採択地区で選ばれる。このうち各区ごとに決めていた横浜市は採択地区を一本化し、全域で同じ教科書が使われることになった。市教委は前回(09年)の採択時、歴史認識をめぐり記述内容に異論も多い自由社の歴史教科書を18区中8区で採択。こうした経緯もあり、今回の採択結果に注目が集まっている。

 横浜市教委が採択地区を一本化したのは09年10月だった。市教委は共通の教科書を使うことで小中一貫教育のカリキュラムが円滑になる、などと説明。しかし、国の行政改革委(当時)が1996年に「学校現場の意見がより反映されるように」と提言し、全国的な流れになった採択地区の細分化の方向とは逆行する動きだった。

 一本化に反対する市民団体などは「地域の実情に応じた教科書の多様性が失われる」などと反発。背景には、市教委による前回の教科書採択の経緯に対する不信感がある。

 横浜市のそれまでの教科書採択は、市教委が任命した教員や学識経験者でつくる教科書取扱審議会の答申をもとに、教委事務局が各区にふさわしい教科書1社を提案。教育委員がそれを尊重する形で決まっていた。

 前回も、審議会は4〜6項目(観点)の切り口で各社の教科書を比較。歴史教科書の自由社版については、9区で「我が国の文化と伝統を考え、国民として自覚を持とうとすることができる」との1項目を評価したが、ほかの出版社のほうが評価された項目は多かった。

 しかし、答申を受ける側の市教委は、歴史教科書について05年の前々回までのやり方を大きく変更。05年の採択時にただ1人、自由社と同じ「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された扶桑社を推した今田忠彦委員長の提案で、教育委員6人が無記名投票で決めた。

 その結果、自由社版は審議会で1項目も評価されなかった緑区と金沢区も含めて8区で採用。2人の教育委員は全18区で自由社を推していた。今田委員長は当時、「答申はあくまで参考意見で、最終的に決めるのは教育委員。議会で選ばれた我々に権限が与えられているのだから仕方ない」と説明している。

 一方、現場の教師や専門家からは「教えやすい教科書を選んでほしい」「教育委員の独断で決めていいはずがない」などの批判が相次ぐ。

 つくる会系の教科書は東京都の都立中高一貫校や杉並区、愛媛県今治市などで使われているが、全国で使われている歴史教科書のシェア(10年度)は約2%にとどまっている。

■現場の意見、反映方法は様々

 横浜市以外の自治体では、どのように採択しているのか。教委が審議会に諮問し、審議会が調査員や研究会などに調査を依頼する点はほぼ共通しているが、現場の教員の見方をどう吸い上げるかはさまざまだ。

 川崎市は採択の時期に、学校ごとに教科書の検討会を開催。生徒の関心や意欲を高める内容かどうか、歴史の流れや時代の特色を公正に判断しているかなどの特徴について、教員の見方をまとめて研究会に提出。研究会はこれを踏まえて審議会に報告し、審議会の答申に反映される。

 大阪市では選定委員会(横浜市の取扱審議会に相当)の下に「中央」、「地区」(8採択地区を代表)、「学校」(市立中の全教員で構成)の3種類の調査委が置かれ、それぞれが独立して各教科書の特徴を選定委に報告。学校側の意見が直接届く仕組みだ。

 ただ歴史・公民の教科書については、橋下徹府知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」の市議団が今月、市教委に要望書を提出。教育基本法の「伝統と文化の尊重」「我が国と郷土を愛する」などの趣旨を踏まえるよう求めた。教育現場の外からの働きかけも強まっている。

 子どもと教科書全国ネット21の俵義文事務局長は「現場の声を遮断している点で、横浜市の制度はかなり特異な部類に入る」と指摘する。一方、横浜市教委指導主事室は「審議会や調査員に教員が多数入っている。逆に、現場の意見のみで決まるようだと制度本来の趣旨をゆがめることになる」としている。(佐藤善一、古沢範英)


学校教科書採択考える勉強会、育鵬社の執筆者を招き開催/神奈川

神奈川新聞 2011年6月23日

 今夏行われる中学校教科書採択について考える勉強会が22日、横浜市中区の横浜市役所で開かれた。高崎経済大学の八木秀次教授が講演し、一般市民や横浜市議ら約150人が参加した。自民党横浜市会議員団と同党横浜市連政務調査会の共催。

 八木教授は、育鵬社の歴史と公民教科書の執筆者。各社の教科書の記述内容を比較し、「出版社ごとに特徴があり、どの教科書が採択されるかで(社会や歴史に対する)子どもの意識に違いが出る」と語った。

 各社の教科書で取り上げている人物や記述内容の一覧表を示し、「わが国の郷土を愛するという教育基本法の趣旨を踏まえた教科書が採択されるべきだ」と強調した。


教科書採択控え市教委から回答、市民団体の公開質問状に/横浜

神奈川新聞 2011年6月23日

 中学校の教科書採択を夏に控え、横浜市教育委員会の6委員各人に対して公開質問状を送っていた市民団体「横浜教科書採択連絡会」は23日、市教委から回答があったと発表した。

 連絡会は、自由社版歴史教科書の誤りやそれが訂正されていないこと、採択した教育委員の責任などについて質問。回答として市教委は(1)教科書は国の検定に合格している(2)教科書の誤記は発行者が必要な訂正を行わなければならないと国の規則にある―などとした。


小田原市議会が「ノー」

朝日新聞 2011年06月17日

 小田原市議会は16日の本会議で、育鵬社と自由社の公民・歴史教科書を不採択にするよう求めた陳情を賛成多数で採択した。陳情は「誤った価値観を植え付ける」として、在日本大韓民国民団県湘西支部が出していた。

 市議会では「反韓国、反中国の感情をあおり立てており、採択すべきでない」という意見が大勢を占めた。一方、「教科書の是非はともかく議会で審議することが、教育委員会の中立性を侵すことになる」とする意見もあり、本会議での採決を棄権する議員も出た。

 民団湘西支部の白海秦団長は「教育委員会に圧力をかけるつもりの陳情ではない。議会に問題の認識をもってほしい」と話す。

 これに対し、教育委員会事務局は「市議会の陳情採択で教科書選びが左右されることはない」という。


名簿公開命じる、横浜市「教科書調査員」/横浜地裁

神奈川新聞 2011年6月16日
原告請求通りの判決を評価する大川弁護士(左)らかながわ市民オンブズマンのメンバー=横浜市中区の市開港記念会館

 横浜市の教科書採択を前に内容を調査し報告書を作成する「教科書調査員」について、かながわ市民オンブズマンのメンバーが同市を相手に名簿公開を求めた訴訟の判決で、横浜地裁(佐村浩之裁判長)は15日、原告請求の通り、調査員名簿を公開するよう命じた。

 同市は「名簿が公開されると教科書会社から調査員に宣伝行為がある」としていたが、判決は市の主張を「抽象的な可能性を指摘するにすぎない」と否定。オンブズマン側が「教科書が公正に採択されたか事後検証するために名簿は必要」とした点にも触れ、検証目的の働きかけは市民への説明責任を果たすために調査員が受忍すべきとした。

 原告代理人の大川隆司弁護士は「市は判決が認めた説明責任を果たすべき」と述べた。横浜市教委は「判決内容を精査し、対応を決めたい」としている。

 調査員は主に現職教員。名簿は2009年度まで教科書採択後に公開されていたが、中学校以外の教科書を採択する10年度は、小学校や高校の教員ら138人全員の名簿が非公開とされた。判決を前に同市の情報公開・個人情報保護審査会が今月3日、「名簿は開示すべき」と答申している。

 同オンブズマンのメンバーは、名簿を非公開、または採択の翌年の開示とした横浜市を含めた7自治体を相手に開示訴訟を起こしたが、横浜市以外は自治体側が係争中に公開を決め、訴訟は取り下げている。

原告請求通りの判決を評価する大川弁護士(左)らかながわ市民オンブズマンのメンバー=横浜市中区の市開港記念会館
原告請求通りの判決を評価する大川弁護士(左)らかながわ市民オンブズマンのメンバー
=横浜市中区の市開港記念会館


「つくる会」歴史教科書が年表丸写し 市民団体が指摘

朝日新聞 2011年6月14日

 市民団体「子どもと教科書全国ネット21」(事務局・東京)は13日、横浜市で記者会見を開き、「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された自由社の中学歴史教科書2012年版の年表が、東京書籍の02年版教科書とほぼ一致していると発表した。

 同ネットによると、両教科書の年表の「日本のおもなできごと」で、「縄文時代 採集や狩りによって生活する」から「1997 アイヌ文化振興法制定」までの約180項目すべてで出来事の選択が一致した。

 9項目で「大和国家」「太平洋戦争」(東京書籍)と「大和朝廷」「大東亜戦争(太平洋戦争)」(自由社)などの違いがあった以外は表現も一致していた。

 横浜市内8区の市立中学校で自由社の10年版教科書が使われており、10年版もほぼ同様の状態だったことから、同ネットは今回、横浜市で発表したという。

 同ネットの俵義文事務局長は「丸写しで盗用した可能性が高い。他社が改良を重ねて築いた成果を勝手に使うことは大問題だ」と指摘。他にも同様のケースがないか調べているという。

 東京書籍は「初めて聞いた話で驚いている。事実関係を確認のうえ今後の対応を考えたい」としている。

 自由社版教科書の代表執筆者で「つくる会」会長の藤岡信勝さんは「指摘を受けるまで気づかなかった。年表作成の担当者は自由社を退社しており、経過を確かめようもないが、関係者に迷惑をかけ、深くおわびする。夏にこの教科書が採択された後、来春の使用開始までに充実した年表につくり直す」と話した。


採択前に教科書展示会始まる、中学歴史と公民への関心高く/神奈川

神奈川新聞 2011年6月9日

 今夏採択される中学校の新教科書と、小学校で現在使われている教科書の展示会が8日、横浜市内で始まった。「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した自由社の中学校歴史教科書が、全国の公立学校で初めて横浜市内の8区で採択されたことから、歴史教科書に関心が集まっていた。

 来年度から使用される中学校の教科書は、8月末までに県内すべての地区で採択される予定。展示会は多くの人に教科書を見比べてもらおうと、各地の教育委員会などの主催で県内全域で開かれる。

 県内の展示会で先陣を切ったのは、横浜市港北区、戸塚区、旭区の3会場。港北図書館(港北区菊名)では、会議室に真新しい教科書が出版社別に並べられた。

 歴史と公民の中学校教科書への関心が高く、多くの人がページをめくって、記述内容を見比べていた。

教科書の記述内容を見比べることができる展示会=港北図書館
教科書の記述内容を見比べることができる展示会=港北図書館


市民団体「教科書採択連絡会」が市教委に公開質問状/横浜

神奈川新聞 2011年6月7日

 横浜市内8区の市立中学校で使用されている自由社版歴史教科書について、市民団体「横浜教科書採択連絡会」は6日、市教育委員6人に対して公開質問状を提出した。

 連絡会や公開質問状によると、「(連絡会などが指摘してきた教科書の)間違いが、新版ではほぼ削除され、現行版の間違いを認めたと考えられる」にもかかわらず、現在使用されている現行版への当該箇所の訂正はされておらず「間違いのまま授業で学ばされるのはおかしいと思うが、どうか」など、5問にわたり質問している。20日ごろを回答期限としている。

 8月には全市一括の中学校教科書の採択を控えていることから、連絡会は「(現行版の訂正がないのは)教科書会社として不誠実。教科書を選ぶ立場の教育委員にも、是非を問いかけたい」などとした。


教科書調査員の名簿開示を答申 横浜市情報公開審

朝日新聞 2011年6月6日11時35分

 教科書の内容を採択前に調べる調査員の名簿を非公開としていた横浜市教育委員会に対し、市情報公開・個人情報保護審査会は3日、名簿を開示するよう答申した。開示請求した市民は「異例の非開示だった。妥当な結論」と語った。

 教科書調査員は、教科ごとに現職の校長や教員らで構成。各社の教科書の特徴を調べて、教科書取扱審議会に報告する役割を担う。審議会が推薦し、市教委が任命している。

 審議会が、調査員の報告書などをもとに各教科書の評価を市教委に答申。市教委がこの答申を参考に採択する教科書を決めるという流れになっている。

 調査員の名簿は2009年度までは採択決定後に閲覧できたが、10年度から「外部からの働きかけで適正な事務が阻害される恐れがある」として非公開になった。

 この日の情報公開審査会の答申は「市民からの働きかけが直ちに教科書調査に支障を及ぼすとは言えない」と市教委の主張を退けた。

 答申について、市教委の斉藤一弥・指導主事室長は「答申を尊重して対応する」としている。

 横浜市教委は09年夏、18区のうち8区で、「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された中学校の歴史教科書を採択。教科書取扱審議会の答申ではこの教科書の評価は、高くなかった。同年10月には区ごとの採択を、市内全域で同じ教科書を使うように変更。今夏には来春から使用する中学校の教科書採択が決まるため、全国的に注目が集まっている。

 請求した磯子区の主婦(62)は「横浜では、強引な手法が続いてきた。採択の経過の透明性を確保するためにも、情報公開の流れを逆行させるべきでない」と話した。(古沢範英)

教科書の決め方
教科書の決め方


中学校の教科書採択めぐり在日韓国人らが集会/横浜

神奈川新聞 2011年6月5日

 今夏に予定されている中学校の教科書採択に向け、在日韓国人の立場で「正しい歴史認識に基づいた歴史教科書」を採択するよう求める集会が4日、横浜市内で開かれた。在日本大韓民国民団神奈川県地方本部の主催。約150人が集まり、自由社と育鵬社が発行する教科書の採択阻止を訴えた。

 集会で、自由社と育鵬社の教科書について「戦争を正当化し美化している」「アジアを蔑視するような内容が随所に見られる」と批判の意見が出た。また、両教科書による教育で子どもたちに偏見と差別意識が生まれ、同じ学校に通う「同胞子弟にいわれのない劣等感を与えかねない」と指摘した。

 採択に向けては、2社の教科書が「公教育の場に登場することを絶対に許さず、断固阻止する」とした決議文をまとめ、県内各自治体の教育委員会などに対して要望活動を展開する方針を確認した。

 また、横浜教科書採択連絡会の佐藤満喜子さんによる講演も行われ、問題意識の共有が図られた。


横浜市の審査会、教科書調査員の名簿「開示すべき」と答申

神奈川新聞 2011年6月4日

 横浜市立学校の教科書採択をめぐり、各教科の教科書について調査・分析する教科書調査員の名簿を市教育委員会が非公開とした問題で、市情報公開・個人情報保護審査会は3日、「開示すべき」と答申した。

 答申は、昨年8月に教科書調査員の一人がルポライターを名乗る男性から取材を受けたことで感じた不安感を理由に非公開とした市教委の決定について、「通常の取材の域を出ているとはいえず、今後の教科書調査への支障を及ぼす恐れがあるとは認められない」。また、名簿の公開により調査員に対する教科書会社などからの過度な宣伝活動などという市教委の懸念についても、「具体的な事例の説明を求めたが、説明はなかった」とし、「(市教委の)主張する懸念は抽象的なものにすぎない」と結論づけた。

 市教委によると、調査員は教科書採択を答申する「市教科書取扱審議会」が教科ごとに校長や教諭らを推薦、教科書内容を分析して審議会へ報告書を出す。審議会は報告書に基づき教育委員会に答申。市教委は答申を踏まえて教科書を採択する。名簿は2009年度まで採択後に市役所内で閲覧が可能だった。

 昨年から非公開となったことを受け、磯子区内に住む主婦の女性(62)が公開請求していた。答申を受けて女性は「(教科書採択に関して)不透明な部分があれば、公正確保に影響を及ぼす。答申はまっとうな判断だ」と述べた。一方の市教委は「調査員を守るための未然防止策として非公開にした。非常に残念」とした上で、今後の対応は「答申を踏まえ検討する」としている。

 答申に拘束力はないが、市情報公開条例では「尊重し決定しなければならない」と明記がある。30日以内との努力規定もある。この件をめぐっては、公開を求めた訴訟の判決が15日に横浜地裁で言い渡される。そのため市教委は判決の後で対応を決定する見通しだ。

 横浜市では09年、自由社版の中学校歴史教科書が8区で採択された後、全18区の採択を一本化する変更もなされている。今夏には中学校の教科書採択が控えている。


2社の中学公民教科書「不採択を」、弁護士らが意見書を県教委などに提出/神奈川

神奈川新聞 2011年6月2日

 横浜弁護士会に所属する弁護士でつくる県内法律家4団体が1日、今夏の中学校教科書採択で、育鵬社と自由社が発行する公民の教科書を採択しないよう求める意見書を県教育委員会と横浜市教育委員会に提出した。

 意見書では、両社の教科書について「(第2次世界大戦への)反省には一切言及しない。憲法学の通常の理解とは異なる特異な見解」と批判。また、現在の憲法について、「国民に広く受け入れられたことに言及せず、読み手を憲法改正に誘導しようとする意図が露骨」としている。

 意見書を提出したのは、神奈川労働弁護団、社会文化法律センター神奈川支部、自由法曹団神奈川支部、青年法律家協会弁護士学者合同部会神奈川支部。


教科書採択めぐり県民の集い開催/神奈川

神奈川新聞 2011年5月28日

 今年8月に予定されている中学校の教科書採択について考えてもらおうと、「教科書検定・採択制度を考える県民の集い」が27日、横浜市神奈川区の神奈川公会堂で開かれ、約550人が参加した。四つの市民団体でつくる「横浜市教科書採択を考える県民署名実行委員会」の主催。

 主催者や中学生の子どもを持つ保護者らがステージに上がり、「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した自由社の教科書と、「日本教育再生機構」が主導した育鵬社の教科書について、「一面的過ぎる」「戦争を美化している」などと批判。主催者は不採択となるよう活動していく必要性を訴えた。

 また、法政大学の田中優子教授による講演も行われた。


伝統や文化教育充実の一方「正確性」削除に反発も、教科書採択に新指針/神奈川県

神奈川新聞 2010年4月21日

 県教育委員会は20日、臨時会を開き、今夏採択する小学校教科書の採択方針と教科書調査研究の新指針を全会一致で可決した。伝統や文化についての教育や道徳教育の充実を教科書調査研究の観点として新たに盛り込んだ。一方で教科書の正確性を重視する項目が削除されたことに、市民団体は反発している。

 大幅な変更があったのは、県教科書用図書選定審議会が各出版社の教科書を調査研究する際の指針。教育基本法、学校教育法、学習指導要領の内容を踏まえているかが新たな観点となった。また、県教委が定める「かながわ教育ビジョン」と関連付け、「思いやる力」「たくましく生きる力」「社会とかかわる力」を育成できるかを重点項目とした。

 削除された項目が、これまで観点の一つとされてきた「教科書の正確性」。市民団体「教科書問題を考える横浜市民の会」は、「誤記や不正確な記述がある教科書が選ばれかねない」と反発している。

 同審議会は今月末から新指針のもとで各出版社の教科書を評価し、県教委に結果を答申。7月上旬以降の県教委で、県教育委員らが答申を参考に教科書を採択する。


「新教科書に震災の記述を」 各社が訂正申請検討

朝日新聞 2011年4月1日

 2012年度から使われる新しい中学校の教科書に東日本大震災を盛り込もうと、教科書各社が検定に合格したばかりの新教科書について、文部科学省への訂正申請を検討している。

 学習内容の充実を掲げた新学習指導要領を受け、新教科書には地震や原子力発電に関する記述が豊富に盛り込まれている。ただ、編集作業は震災前。文科省に申請本が提出されたのは昨年2〜4月だった。

 新興出版社啓林館の1年理科は、巻末の地域資料集で、1896年の明治三陸地震を取り上げた。倒壊した家屋や、当時の津波の高さを示す表示板の写真を掲載。表示板には「災害は忘れた頃に……」の文字がある。本文ではこう解説している。「この津波による犠牲者は約22000人で、日本の津波災害としては過去最大の被害であった」

 新教科書は12年度から4年間使われる。啓林館の理科の編集担当者は「これだけ大きな震災があったのに、全く触れていないことの方が不自然」。津波の「過去最大」という表現など、東日本大震災をふまえてデータを更新すべき部分は訂正を申請したい考え。国内の主な地震の一覧表も訂正申請の候補という。

 説明写真には多くの教科書が阪神大震災などを使っているが、今回の震災への差し替えについては「被災地の生徒が手にした時、どんな思いをするか」(東京書籍)、「被害が癒えない段階で載せることがいいかどうか」(教育出版)と、多くの社が慎重な姿勢だ。

 原発については有用性と危険性がすでに併記されており、訂正は不要とみる社が多い。チェルノブイリ原発事故や、放射線を発見した物理学者アンリ・ベクレルを紹介した教科書もある。

 ただ、福島第一原発の上空写真を掲載した学校図書は、差し替えを予定。日本文教出版の地理も、関東で使う電力への福島県の原発からの供給割合に触れた記述の訂正を検討中だ。

 理科以外の教科書でも今回の震災の記述を追加する動きがある。清水書院と育鵬(いくほう)社は歴史教科書で、大修館書店は保健体育の災害対策を学ぶ項目で触れることを考えている。編集担当者は「中学生にとって阪神大震災は生まれる前の出来事。災害の恐ろしさを理解してもらうためにも、最新の出来事に差し替えるべきだと考えている」と話す。

地震や原発を記述した新しい教科書=伊藤進之介撮影
地震や原発を記述した新しい教科書=伊藤進之介撮影


竹島・尖閣、掲載が大幅増 中学教科書12年春から

朝日新聞 2011年3月31日

 2012年春から中学校で使われる地理と公民の教科書で、韓国、中国とそれぞれ領有権をめぐる対立のある竹島(島根県、韓国名・独島〈トクト〉)や尖閣諸島(沖縄県、中国名・釣魚島〈ティアオユイタオ〉)に触れたものが大幅に増える。文部科学省が30日に公表した教科書検定結果からわかった。竹島については「韓国が不法に占拠」といった表現をした教科書も複数ある。

 前回04年度の検定に基づく現行の教科書では、竹島の領有権問題を取り上げたのは公民の3点だった。これに対し、今回は合格した教科書会社7社の地理と公民の教科書計11点のうち7社10点が竹島問題を取り上げた。1社は歴史教科書でも触れた。

 竹島を日本の「固有の領土」と明記したのは6社8点。このうち教育出版の地理は「竹島は日本の固有の領土であり、1905年から島根県の一部としてきた島ですが、1952年以降、韓国政府が不法な占拠を続けています」と記した。東京書籍は地理で「韓国が占拠しており、対立が続いています」。公民では「不法に占拠」と表現し、日本が抗議を続けていることも紹介した。

 「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された自由社の公民は、韓国が「1954年には、沿岸警備隊を派遣し、竹島を実力で占拠した。現在も、警備隊員を常駐させ、実力支配を強化している」などと詳述。韓国政府の見解と日本政府の反論を併記した。

 各社の記述のベースにあるのは08年度改訂の中学校新学習指導要領の解説書。地理分野で「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせる」との文言が盛り込まれた。当時、各地の日韓交流事業が中止されるなど、日韓関係が冷え込んだ経緯がある。

 文科省幹部は「『北方領土と同様に』の文言から『占拠』のニュアンスが読み取れる」と話す。日韓で主張が違うことに触れるにとどめた教科書もあるが、文科省教科書課は「各社が自主的に判断した」と説明。どの教科書にも、記述内容を直接問題にした検定意見はつかなかった。

 尖閣諸島は公民6点と地理1点が取り上げた。歴史も1点。現行教科書では公民3点だけだった。

 「中国もその領有を主張しています」(教育出版・公民)、「1895年、正式に日本の領土に編入し(中略)たが、1970年代ごろから中国が領有権を主張するようになった」(清水書院・公民)といった内容。育鵬社の公民は外務省サイトを引用し、政府見解を掲載した。

 検定申請は昨夏の中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突事件前に締め切られており、事件に触れた教科書はない。

 尖閣には「領有権の問題は存在しない」というのが政府見解で、新指導要領も竹島と違って記述を求めていない。文科省教科書課は各社の自主的な判断で記述したとする。ある教科書会社の編集担当者は「執筆時点ですでに尖閣沖で頻繁に領海侵犯事件が起きていたので、触れておこうと判断した」と話している。(花野雄太)

領土問題に触れた教科書の記述
領土問題に触れた教科書の記述=伊藤進之介撮影


つくる会教科書「採択しないで」=「新要領適切に反映」と同会

時事通信 2011年3月30日21時6分

 新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した中学の歴史と公民の教科書(自由社)が、検定で合格したことを受け、同会の教科書に反対する市民団体「子どもと教科書全国ネット21」が30日、記者会見し「間違った歴史や憲法観を子どもたちに擦り込み、『戦争をする国』づくりを目指している」などとする声明を発表した。

 同団体の俵義文事務局長は「各教育委員会が、(中国や韓国などとの)共同宣言や首相談話の趣旨を正しく反映しない教科書を採択しないよう強く要請する」と訴えた。

 一方、つくる会の藤岡信勝会長らも同日、会見し「どの教科書が改正教育基本法や新学習指導要領の改善点を反映しているか精査し、その結果に基づいて採択されなければならない」との声明を読み上げた。その上で「自由社の教科書こそが最も適切に満たすものだ」と主張した。


横浜市教委が同趣旨の請願を効率的に処理へ、教育長専決に改正/横浜

神奈川新聞 2011年3月9日

 横浜市教育委員会は8日、定例会を開き、会議規則の一部改正を了承した。市民らからの請願・陳情のうち、教育委員会が指定したものについて教育長の専決事項とする趣旨の改正で、市教委の教科書採択に反対する市民団体からは「市民の声を封殺するものだ」と反発の声も上がった。

 市教委事務局によると、2009年度に寄せられた請願・陳情・要望は482件。市内8区で自由社版歴史教科書が採択された年でもあり、前年度の20倍超に及んだ。「教育委員会として回答したものと同じような趣旨の請願・陳情が繰り返し提出され、そのたびに同じ意思決定が必要になる」(市教委)ことから、効率化の観点で規則の改正に踏み切ったと説明する。

 一方、この日会見を開いた「横浜教科書採択連絡会」は「市民の請願がどういう内容で何件寄せられているのか、(教育長以外の)教育委員は把握しないことになる。そもそも請願などが増えたのは、市教委が不明朗な教科書採択をしたためだ」と反発した。

 11年度は中学校教科書の採択を控える。市教委は、教育長の専決処分とする具体的な対象を今後詰めるとしている。


教科書採択:「自由社」中学歴史教科書、鶴見の市民団体が不採択を請願 /神奈川

毎日新聞(神奈川版) 2011年2月15日

 横浜市内8区の市立中学で昨春から採用の「自由社」歴史教科書に反対する「教科書採択を考える鶴見区民の会」は14日、「誤った歴史認識を植え付ける」として、林文子市長、今田忠彦教育委員長あてに不採択にするよう請願書を出した。

 同会は脚本家の小山内美江子さんらが代表呼び掛け人で、高木七郎事務局長ら17人が市役所で梅津真一郎秘書部長に約1000人の署名を手渡した。

 8区以外で採択の帝国書院などの教科書と自由社の教科書の記述の違いについて、高木さんらは「広島・長崎被爆や東京大空襲、沖縄地上戦などで歴史認識が他社と異なっている」「教師が使う指導書でも偏った記述が目立つ」と指摘した。

 梅津秘書部長は「今夏、教科書の採択が行われる。請願は市長、教育委員会に伝える」と答えた。【網谷利一郎】


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